社交不安障害とは
人との交流の場で「恥ずかしい思いをするのではないか」と不安を感じるのは、誰にでも起こるごく自然な反応です。しかし、社交不安障害では、人から見られている時に何かをすることを過剰に恐れます。どう見られているかを過度に気にしてしまい、不安や緊張が強くなって苦しく感じるようになります。その結果、人前に出ることを避けてしまい、日常生活に支障をきたすようになります。
社交不安障害とあがり症
いわゆる「あがり症」は、単なる性格の問題ではなく、「社交不安障害」という病気である可能性があります。人前に立つと、強い不安や緊張から、「声が出ない」「顔が赤くなる」「大量に汗をかく」といった身体的な症状があらわれることがあります。
社交不安障害になりやすい人
自己肯定感が低く、困難な状況を避ける傾向がある方は、社交不安障害を発症しやすいとされています。ただし、これは性格によるものではなく、こうした傾向がない方でも発症する可能性があります。
社交不安障害の生涯有病率は約13%とされており、つまり7人に1人が人生のどこかで経験すると言われるほど、比較的一般的な疾患です。
社交不安障害の症状
- 人前に出ると緊張して、うまく話せなくなる
- 大勢の前で話すと、息苦しさを感じる
- 人と話すこと自体が大きなストレスになる
- 常に他人の視線が気になって落ち着かない
- 視線を合わせるのが苦手で、無意識に避けてしまう
- 人前に立つと頭が真っ白になり、どう行動すればよいかわからなくなる
- 手や声が震えたり、冷や汗、動悸、息苦しさといった身体症状が出る
- 他人に悪く思われているのではと不安に感じる
- 顔が赤くなったらどうしようと心配になる
- 人前で字を書くときに手が震えたらと不安になる
- 食事の場面で自然に食べられなかったらどうしようと気にしてしまう
このような症状が続くと、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。社交不安障害は適切な治療で改善が見込めますので、お悩みの方は一度ご相談ください。
社交不安障害の治療
社交不安障害の治療では、お薬による治療と心理療法を組み合わせて行います。
お薬による治療
使用される薬には、抗不安薬、抗うつ薬の一種であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などがあります。
抗不安薬は、不安感や身体症状を直接やわらげる働きがあり、SSRIやSNRIは人と接する場面で不安そのものが起きにくくなるよう作用します。
また、人前に出る前に抗不安薬をあらかじめ服用しておくという方法もよく用いられます。
行動療法
行動療法では、「社交の場で恥をかくのではないか」という誤った認識や、人前に出ることを避ける回避行動を少しずつ見直し、悪循環を断ち切ることを目指します。
その際、「人にどう見られているか」ではなく、「自分がどのようにその場をとらえているか」という視点への切り替えを促していきます。
また、不安の程度が低い状況から段階的に社交場面に挑戦していくことで、少しずつ不安をコントロールできるようにしていきます。