睡眠障害

「眠いのに眠れない」と感じる方へ

「眠いのに眠れない」という矛盾した症状は、多くの人が経験するものです。布団に入っても眠れない状態が続くと、それだけでつらく感じますし、翌日には日中の集中力の低下やイライラが生じることもあります。そのため仕事のパフォーマンスにも影響を与えることもしばしばあります。
このページでは、眠気があっても眠れない原因とその治療法についてご説明いたします。

不眠症とは

適切に睡眠を取れないことによって、日中に倦怠感、意欲の低下、集中力の欠如、食欲不振などの不調が現れる病気です。不眠症には「入眠障害」(寝つきが悪い)、 「中途覚醒」(眠りが浅く、何度も目が覚めてしまう)、 「早朝覚醒」(早朝に目が覚め、その後眠れない)といった症状があります。
日本人の30〜40%が何らかの不眠症状を抱えており、特に女性に多いとされています。加齢とともに不眠症は増加し、60歳以上では半数以上の人が不眠を経験していると言われています。このように不眠症は一般的な病気です。 診察では、不眠症状に伴うさまざまな睡眠障害の鑑別も行います。例えば、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、レム睡眠行動障害、悪夢障害、うつ病による不眠などが考えられます。病歴を詳しく伺いながら診断を進め、必要に応じて専門施設での検査を行います。これらの特殊な睡眠障害には、それぞれに適した治療法があり、通常の不眠症とは異なる治療が求められる場合があります。

6時間未満の睡眠が続く場合は、早めにご相談ください

睡眠時間については個人差がかなりあると言われておりますが、「過労死」に関する研究では、睡眠時間が6時間未満になると、脳出血や心筋梗塞などのリスクが高まることが示されています。十分な睡眠が取れていないと、日中の眠気、集中力の低下、仕事の能率低下、胃腸障害などが引き起こされる可能性があります。また、睡眠不足、メタボリックシンドロームや睡眠時無呼吸症候群の原因となるとも言われています。

睡眠障害の主な要因

眠れない原因は多岐にわたります。ストレスや心理的な要因、周囲の音や光といった環境的要因、心身の疾患、生活習慣、さらには嗜好品や薬の影響などが挙げられます。それぞれの原因に対して適切な対策が必要です。

ストレスなどの心理的要因

日中に感じたストレスが夜まで続くと、就寝前にリラックスできず、眠れなくなることがあります。このタイプの不眠症は非常に一般的であり、ほとんどの場合、一時的なものです。しかし、ストレスを感じて眠れないことが続くと、睡眠に対する過度な意識が逆効果を招き、さらに眠れなくなることもあります。これは、睡眠を取ろうとするあまり、逆に緊張が高まってしまうためです。

音や光などの環境的要因

寝室に外部の音や光が入ってくると、せっかく眠れる環境が損なわれ、安眠できなくなります。また、換気不足で空気が滞留することや、室温が快適でないと、眠りにくくなることがあります。これらも眠れない原因として無視できません。

こころやからだの病気

うつ病や不安障害、躁うつ病などの精神的な疾患が原因で不眠が生じることがあります。また、レム睡眠行動障害や悪夢障害などの睡眠時随伴症も不眠の原因です。さらに、体の病気としては睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグ症候群、アトピー性皮膚炎のかゆみ、神経因性膀胱の頻尿なども眠れなくなる原因となります。

生活習慣の乱れによる生理的要因

昼寝のし過ぎやシフトワークによる生活リズムの乱れも不眠を引き起こします。夜更かしをして寝る時間が遅くなると、翌日の起床が遅くなり、その結果、翌晩の入眠も遅くなるという悪循環が生じます。こうした生活リズムの乱れが体内時計に影響を与え、睡眠の質を低下させます。

嗜好品や薬剤などの作用物質

アルコールやカフェイン、ニコチンなどの嗜好品は、眠りに影響を与えることがあります。アルコールは睡眠を浅くし、カフェインやニコチンは覚醒作用を持っているため、夜間の睡眠に支障をきたします。さらに、処方薬の副作用としても、不眠を引き起こすものがあります。例えば、ステロイドなどがその例です。

不眠症の代表的な症状

  • 寝つきが悪い(入眠障害)
  • 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
  • 朝早く目が覚め、その後眠れない(早朝覚醒)
  • 寝ている時間が短く、睡眠の質が悪い
  • 寝ている感覚がない(疲れが取れない)
  • 夜間に眠れないことで日中に強い眠気を感じる
  • 日中に倦怠感や疲れを感じる
  • 集中力の低下や仕事のパフォーマンスの悪化
  • 眠れないことに対する強い不安や心配感
  • イライラや気分の不安定
  • 食欲の低下または増加
  • 精神的な落ち込みやうつ状態

これらの症状が長期間続くと、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

不眠症の治療法

適切な睡眠の目安として、朝目覚めたときに十分に休息を感じることが重要です。まず、十分な睡眠時間を確保することが基本ですが、年齢を重ねるとともに必要な睡眠時間は短くなる傾向があります。睡眠時間をしっかり確保しても、熟眠感が得られない場合は、必要に応じて個々の患者様に合った環境調整と薬物療法を組み合わせた治療を行います。環境調整では、毎朝決まった時間に起床すること、日中の身体活動を増やすこと、規則正しい食事や生活のリズムを整えることが基本です。また、嗜好品の摂取を見直すことも重要です。さらに、寝室の環境を整え、就寝前に心身をリラックスさせる方法をアドバイスします。眠れないことを過度に心配し、無理に眠ろうとすることで不適切な睡眠習慣が形成され、不眠が長引くこともあるため、その点にも注意が必要です。薬物療法については、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、ベンゾジアゼピン系などの睡眠薬が使用されます。患者様の不眠の症状に合わせて、最適な薬を本人と相談しながら選びます。

眠いのに眠れない時の対策

誰でも実践できる快眠法として、夜ベッドに入る前にゆっくり深呼吸を繰り返すことが挙げられます。これにより心を落ち着け、眠りやすくすることができます。また、布団に入る前に瞑想やヨガを行うことも効果的です。これらはストレスを軽減し、副交感神経を優位にすることで、心身をリラックスさせます。