月経前症候群・PMS 
月経前不快気分障害・PMDD

そもそもうつ病は女性に多く見られます

うつ病は女性に多く見られます

うつ病を発症する割合は、男性よりも女性の方が約2倍多いとされています。この傾向は特定の年齢層に限らず、すべての年代で見られます。背景には、女性特有のホルモンバランスの変動に加え、家庭や職場での役割の多様化、ライフイベントによる環境の変化など、複合的なストレス要因が関係していると考えられています。

生理前の不調でお悩みの方へ

生理前の不調でお悩みの方へ

多くの女性は、月経が始まる少し前から体や心の不調に悩まされることがあります。たとえば、体がだるい、食欲がない、イライラしやすくなる、不安感が強くなるなどです。こうした状態は、月経前症候群(PMS)や、精神的な症状がより強く現れる月経前不快気分障害(PMDD)などに分類され、女性特有のうつ状態とも深い関わりがあります。

自分の心や体の変化に気づき、その反応と上手につき合っていくためには、PMSやPMDDについての正しい理解が欠かせません。理解が深まることで、より適切なセルフケアや周囲のサポートも得られやすくなります。

PMS(月経前症候群)とは

PMSは「Premenstrual Syndrome」の略で、日本語では月経前症候群といいます。月経が始まる3~10日前から、心や体に不調があらわれ、月経が始まると自然に症状が軽くなるという特徴があります。
日本では、およそ18〜45歳の女性の約1割が、月経周期ごとのPMSに悩まされていると言われています。症状は人によってさまざまで、症状が1つの人もいれば、複数の症状が同時に現れることもあります。

主なPMSの症状

精神的な症状
  • イライラして周囲にあたってしまう
  • 気分が不安定になる
  • 不安や緊張、焦燥感が高まる
  • 何をしても楽しめず、興味がわかない
  • 集中力の低下
  • 無気力
  • 周囲の態度が気になり、感情に振り回される
身体的な症状
  • 疲れやすくなる
  • 食欲が異常に高まる、特定のものを食べたくなる
  • 過眠または不眠などの睡眠障害
  • 乳房の張りや痛み
  • 関節や筋肉の痛み
  • 頭痛
  • むくみ
  • 体重増加

PMDD(月経前不快気分障害)とは

PMDDは「Premenstrual Dysphoric Disorder」の略で、月経前不快気分障害と呼ばれています。症状はPMSと似ていますが、心の不安定さがより強くあらわれるのが大きな特徴です。月経の10日以上前から症状が出ることもあり、PMSよりも長い期間にわたって強い感情の波に悩まされるケースがあります。日常生活や人間関係に支障をきたすことも少なくありません。

主なPMDDの症状

  • 強いイライラや怒りが抑えられない
  • 気分がひどく落ち込む、憂うつになる
  • 不安感が強く、落ち着かない
  • 感情のコントロールができず、対人トラブルが増える
  • パニック発作のような激しい不安が突然あらわれる
  • 身体の不調(下腹部痛、頭痛、腰痛など)も伴う

女性特有のうつ症状が出やすいタイミング

産後うつ

出産後しばらくの間、「些細なことで泣いてしまう」「なんだか気持ちが沈む」といった心の不調が現れることがあります。これはマタニティブルーズと呼ばれるもので、ホルモンバランスの大きな変化や体力の消耗、慣れない育児による一時的な状態です。多くの方が経験する自然な反応ですが、通常は数日~1週間程度でおさまります。
ただし、気分の落ち込みや不安感が長く続く場合は、産後うつ病の可能性があります。気になる症状があるときは、無理をせず産後健診などで医師に相談してみましょう。早期のサポートが大切です。

更年期うつ

女性の身体は閉経前後の約10年間(更年期)に大きな変化を迎えます。この時期には、女性ホルモンの分泌が急激に変化し、身体だけでなく心にもさまざまな症状が現れます。
たとえば、「ほてり」や「のぼせ」などの身体の変化に加え、イライラや落ち込み、不眠、無気力といった心の症状が出てくることがあります。これらが日常生活に支障をきたすほど強く現れる場合、「更年期障害」と診断されることがあります。
更年期にうつ症状が出るケースは「更年期うつ」と呼ばれ、専門的な治療やサポートが必要になることもあります。早めの相談とケアがとても大切です。

PMS・PMDDに対するピル治療と効果

PMS(月経前症候群)は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの急激な変化が関係していると考えられています。このホルモンバランスの変動を穏やかにするため、治療法のひとつとして低用量ピルが使われることがあります。
ピルは排卵を抑える働きがあり、月経周期をコントロールすることで、ホルモンバランスの急激な変化を和らげる効果が期待されます。そのため、PMSの症状—たとえば、気分の波や身体の不調—が軽くなることがあります。こうした治療は、婦人科と連携しながら進めることが一般的です。
一方で、PMDD(月経前不快気分障害)はPMSよりも精神的な症状が強く出ることが特徴です。そのため、ピルによるホルモン調整だけでは十分な効果が得られないケースが多くみられます。
PMDDの治療では、精神科や心療内科でのサポートが重要となり、生活習慣の見直しやストレス対策に加えて、必要に応じて抗うつ薬などの薬物療法を併用することがあります。心の不調が強いと感じる場合は、早めに専門医に相談することが大切です。